電波法のスプリアス測定の基礎 <第5弾>
スプリアス測定時の参照帯域幅とは?
第1弾で触れましたが、国内では2005年12月1日から無線設備のスプリアスの許容値に対する規格
(技術基準等の関係省令及び関係告示)が改正されました。
2022年11月30日にはすべての経過措置が終了し、新スプリアス規格に適合した無線機器の利用が求められます。
第1弾:新スプリアス規格ってなに?旧規格との違いは?(2017年9月)
第3弾と第4弾で、スプリアス測定の周波数範囲についてご紹介しました。
第3弾:スプリアス規格改定で定義された下限/上限周波数とBNとは?(2020年1月)
第4弾:スプリアス規格改定で定義された帯域外領域とスプリアス測定とは?(2020年2月)
第5弾では、それぞれの周波数範囲を測定する際の「参照帯域幅」をご紹介します。
はじめに「参照帯域幅」とは何でしょうか?
総務省の無線設備規則の別表第3号では下記のように記載されています。
『「参照帯域幅」とは、スプリアス領域における不要発射の強度の許容値を規定するための周波数帯幅をいう。』
ここで「参照帯域幅」は「スプリアス領域」に適用されるものであって、「帯域外領域」には適用されない
ということが重要です。こちらは混同されるお客様が多く、お問い合わせも多いのでご注意ください。
そして、スプリアス測定は一般的にスペクトラムアナライザを使って評価しますが、
そのスペクトラムアナライザの設定パラメータの一つである「分解能帯域幅(RBW:Resolution Bandwidth)」を
通常「参照帯域幅」に設定して測定します。
スプリアス領域の参照帯域幅:
スプリアス領域の参照帯域幅は、別表第3号に規定されています。(表1参照)
測定する周波数帯によって参照帯域幅が異なるため、周波数帯ごとにスペクトラムアナライザのRBWを
変えてから測定する必要があるということになります。
一例として、搬送波周波数(fc)が150MHz帯、帯域外領域が fc±62.5kHz の場合の
スプリアス領域の周波数帯ごとの参照帯域幅を図1に示します。
表1:参照帯域幅
参照帯域幅は、スプリアス領域で測定する周波数帯ごとに定義されています。
スプリアス領域の周波数帯 |
参照帯域幅 |
||
9 kHz超 |
~ |
150 kHz以下 |
1 kHz |
150 kHz超 |
~ |
30 MHz以下 |
10 kHz |
30 MHz超 |
~ |
1 GHz以下 |
100 kHz |
1 GHz超 |
1 MHz |
図1:スプリアス領域の周波数帯ごとの参照帯域幅
(例:搬送波(fc)が150MHz帯かつ変調、帯域外領域が fc±62.5kHz の場合)
(画像はクリックして拡大可能)
スプリアス領域の「近傍帯域」とは?
150MHz帯の帯域外領域に近いスプリアス領域は、本来は参照帯域幅と同じRBW=100kHzで測定します。
しかしこの帯域はRBW=100kHzで測定することが難しいため、より狭いRBW=3kHzで測定してから、
本来の参照帯域幅である100kHz相当に換算するという手順で測定します。
このような帯域をスプリアス領域の中でも「近傍帯域」という名称で規定されているケースがあります。
図1の例では、帯域外領域の境界から外側にあたる搬送波(fc)±1MHzが「近傍帯域」となります。
帯域外領域の分解能帯域幅(RBW):
無変調で測定を行う帯域外領域では、スペクトラムアナライザの分解能帯域幅(RBW)はそれぞれの無線設備の
証明規則等で確認する必要があります。以下に例を示します。
例a)RBW:30Hz以上1kHz以下 <150MHz帯 狭帯域デジタル通信方式>
例b)RBW:3kHz <920MHz帯 特定小電力機器>
例c)RBW:30kHz <1.9GHz帯 デジタルコードレス電話>
そして、前述のとおり別表第3号で規定される参照帯域幅(表1)は「スプリアス領域」に適用されるものであって
「帯域外領域」には適用されません。つまり、帯域外領域では測定した電力を参照帯域幅の帯域に換算する必要は
ありません。こちらもお問い合わせが多いのでご注意ください。
図2:帯域外領域のRBW<例a>
(例:搬送波(fc)が150MHz帯かつ無変調、帯域外領域が fc±62.5kHz の場合)
(画像はクリックして拡大可能)
※本記載内容は2020年4月1日現在のものです。
<参考リンク>
第1弾:新スプリアス規格ってなに?旧規格との違いは?(2017年9月)
第2弾:スペクトラムアナライザのカタログスペックにある位相雑音とは?(2018年12月)
第3弾:スプリアス規格改定で定義された下限/上限周波数とBNとは?(2020年1月)
第4弾:スプリアス規格改定で定義された帯域外領域とスプリアス測定とは?(2020年2月)
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