電波法のスプリアス測定の基礎 <第3弾>
スプリアス規格改定で定義された「下限/上限周波数」と「BN」とは?
第1弾で触れましたが、国内では2005年12月1日から無線設備のスプリアスの許容値に対する規格
(技術基準等の関係省令及び関係告示)が改正されました。
第1弾:新スプリアス規格ってなに?旧規格との違いは?(2017年9月号)
改めて、測定する周波数範囲に関する改正のポイントは以下2つになります。
①「下限周波数」と「上限周波数」を明確化
②「必要周波数帯幅(BN)」「帯域外領域」「スプリアス領域」の3つの領域を定義(図1参照)
第3弾では、「下限周波数」と「上限周波数」および「必要周波数帯幅(BN)」について紹介します。
図1:必要周波数帯幅(BN)・帯域外領域・スプリアス領域の定義
(画像はクリックして拡大可能)
■「下限周波数」と「上限周波数」を明確化:
「下限周波数」と「上限周波数」は、測定対象の無線機が利用する搬送波周波数(fc)によって決まります。
<表1参照>
表1:下限周波数・上限周波数
搬送波周波数(fc) |
下限 |
上限 |
||
9 kHz超 |
~ |
100 MHz以下 |
9 kHz |
1 GHz |
100 MHz超 |
~ |
300 MHz以下 |
9 kHz |
第10次高調波(fc×10) |
300 MHz超 |
~ |
600 MHz以下 |
30 MHz |
3 GHz |
600 MHz超 |
~ |
5.2 GHz以下 |
30 MHz |
第5次高調波 (fc×5) |
5.2 GHz超 |
~ |
13 GHz以下 |
30 MHz |
26 GHz |
13 GHz超 |
~ |
150 GHz以下 |
30 MHz |
第2次高調波(fc×2) |
150 GHz超 |
~ |
300 GHz以下 |
30 MHz |
300 GHz |
例えば、400 MHz帯で通信する業務無線機などは、
下限30 MHzから上限3 GHzの周波数範囲を測定する必要があり、
5.6 GHz帯の無線LANであれば下限30 MHzから上限26 GHzの周波数範囲を測定する必要がある
ということです。
また、搬送波周波数が300 MHz以下の無線機は、下限9 kHzから測定する必要があることも
この表からわかります。
このように搬送波周波数(fc)によってスプリアス測定の周波数範囲が決まっているので、
その評価で利用するスペクトラムアナライザの周波数範囲も決まります。
■「必要周波数帯幅(BN)」:
ここでは必要周波数帯幅(BN)について紹介します。
まず、必要周波数帯幅(BN)とはなんでしょうか?
それぞれの無線機は、通信するために必要な伝送速度や変調方式によって信号の幅(周波数)が広がります。
これが必要周波数帯幅(BN)です。
この周波数幅が広がり過ぎると隣の信号に迷惑をかけるので、通信するために十分な周波数幅の上限が決まっています。
これが必要周波数帯幅(BN)の許容値です。
つまり、必要周波数帯幅(BN)は自分自身が利用していい周波数の幅のため、
帯域外領域/スプリアス領域のどちらの場合も測定除外範囲となっています。
必要周波数帯幅(BN)は基本的に「占有周波数帯幅※1の許容値」となっていますが、
条件※2によっては「チャネル間隔」などの値を適用することができます。
※1:後述の「まめ知識」参照
※2:詳細は、総務省資料 別表第3号の2頁(5) をご覧ください。
https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/others/spurious/files/siryo002.pdf
では「占有周波数帯幅の許容値」と「チャネル間隔」ではどちらが広いでしょう?
一例として、公共業務無線の場合、
占有周波数帯幅の許容値:5.8 kHz/11.5 kHz/24.3 kHzなど
チャネル間隔 :6.25 kHz/12.5 kHz/25 kHzなど
となっており、「チャネル間隔」の周波数幅の方が広いことがわかります。
図2:占有周波数帯幅・チャネル間隔のイメージ
(画像はクリックして拡大可能)
【まめ知識】占有周波数帯幅とは?:
占有周波数帯幅とは、無線機が出力する搬送波が変調状態で占める周波数の幅を示します。
一般的にスペクトラムアナライザで測定します。
画面上の全電力を100%として周波数の下方向から電力0.5%になる周波数と、
上方向から電力0.5%になる周波数を確認し、2つの周波数に挟まれた99%電力が占める周波数の幅を求めます。
(一部、許容値が99%ではない無線設備もあります)
つまり、自分自身が送信している電力の大部分(99%)が、自分に割り当てられているチャネルに
収まっていることを確認する、という評価です。
(画像はクリックして拡大可能)
第4弾では引き続き、「帯域外領域」と「スプリアス領域」についてご紹介しますので、どうぞお楽しみに。
※本記載内容は2020年1月1日現在のものです。
<参考リンク>
第1弾:新スプリアス規格ってなに?旧規格との違いは?(2017年9月号)
第2弾:スペクトラムアナライザのカタログスペックにある位相雑音とは?(2018年12月号)
【 もっと詳しく知りたい方 】 |
新スプリアス規格への移行準備は大丈夫ですか?
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