信号を光で送る発光素子 ”レーザーダイオード” って何?(光ファイバ通信の基礎その5)
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今回は、光通信の三大要素の一つであるレーザーダイオード(LD)について見ていきたいと思います。
(1)発光の仕組み
LDは図5-1のように、両端がミラーで挟まれた間を往復することで光を増幅させ、パワーが増えてきたところで光を出射します。
このミラー間の増幅媒体には利得スペクトラムの特性があり、全てで発光するわけではなく、ミラー間の共振器長Lの2倍の整数倍のところしか発光しません。
そのため、発光波長の分布は綺麗な丸形でなく、ギザギザの途中が歯抜けになったような山形のパターンになります。
図5-1 LDの構造と発光スペクトラム
(2)LDの種類
先に説明したような構成のLDはファブリ・ペロー(FP)型LDと呼ばれるものです。
FP型は発光スペクトラム帯域が広いというデメリットがありますが、波長帯域が広くても気にならなければ問題ありません。
そのため、通信以外にもCDやDVDなど様々な市場で幅広く使われています。
FP型以外に図5-2のような分布帰還(DFB)型LDという物があります。波長多重(WDM)通信では狭い波長間隔で複数の波長それぞれでデータを送受信します。
このWDM通信でFP型を使うと、隣の波長と重なってしまい、データにエラーが発生するため、隣の波長と重ならない単一スペクトラムのDFB型が開発されました。
図5-2 スペクトラム波形
(3)波長は温度で変わる
先ほどLDの発光波長は共振器長で決まると説明しました。では、温度が変わると波長が変わるでしょうか?
その通り、発光波長は温度で変わります。
LDに電流を流して発光し始めたときからしばらく見ていると、波長は徐々に変わっていきます。
電流を流しているので、LDチップが熱を持ち、徐々に温度が上がっていきます。
そのため、図5-3のように波長が長い方向にずれていきます。
図5-3 時間とともに変化する波長の例
そうすると、WDM通信のように隣の波長に被らないよう注意する場合、温度で波長がずれると問題になりますよね。
伝送装置が入っている部屋は温度コントロールされているから大丈夫と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、LDチップ自身で発熱するとずれていきます。
そのため、LDチップを温度コントロールする仕組みが組み込まれたモジュールが使われています。
(4)光の波長を確認するには
今まで波長について話してきましたが、ではこの波長、どのように見たら良いのでしょうか?
光スペクトラムアナライザ(以下、光スペアナ)という波長方向のパワー分布を測定する測定器でスペクトラムの形状、波長を見ることができます。
この光スペアナの仕組みは、様々な方式がありますが、世の中で良く使われている回析格子型の分光方式について見ていきたいと思います。
図5-4のように、入射した光は分光器を通過すると波長方向に光が分解されます。
この分光器というのは、皆さん小学校のときにプリズムで太陽の光を虹のように分けて遊んだことがあると思いますが、このプリズムと同様の物です。色の違いは波長の違いですから。
この分光された波長の一部を狭いスリットで抜き出して電気に変換してパワー測定することで、その波長のパワーレベルを測定できます。
この分光器を回転しながらパワー測定すると、波長ごとのパワーを測定してスペクトラム波形を描くことができるというものです。
図5-4 光スペアナの仕組み
(5)光源の種類と波形の例
図5-5の通り、光源の種類によってスペクトラム波形が違うため、それぞれ評価項目や方法が異なります。
同じLDでもDFB型はスペクトラムが1本なので、中心波長を求めるのも簡単ですが、FP型は複数のスペクトラムがあるので、どのように中心を求めたら良いのか悩みます。
そこで、光スペアナには光源の種類を指定することで、最適な項目、評価方法で結果を表示する機能が備えてあります。
図5-5 光源の種類によるスペクトラム波形例
※本記載内容は2021年8月1日現在のものです。
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