近年の光回線通信状況の変化にともなう二つの問題とは? (光ファイバ通信の基礎その4)
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光回線では断線や損失増加という問題が発生する、ということは前回までにご説明しましたが、それ以外に近年の情報通信状況の変化にともなって発生している二つのケースについて取り上げたいと思います。
(1)通信速度の高速化による問題
近年ではユーザ数の増加だけでなく、高分解能高解像度の映像信号を送る用途も増えているために、高速で大容量のデータを送る需要が増えています。そのため、光ファイバで伝送される信号のスピードも非常に高速になっています。
以前の1Gbps程度の回線では光線路の損失だけを気にすれば良かったのですが、10Gbps以上の高速線路になると、光回線の反射にも注意が必要です。
光回線中の反射の大きさは反射減衰量として測定することができます。
光コネクタの接続では、アダプタに差し込むことでコネクタ端面を突き当てています。コネクタ端面はお互いが突き当り、空間が空かないように球面状に研磨して反射減衰量を40~50dBに抑えるようにしています。
反射減衰量とは図4-1に示すようにコネクタ端面に入射されたパワーがどれくらい減衰して戻るかを示しており、数字が大きいほど反射を抑えた良い接続となります。
図4-1 反射減衰量とは
ここで、大きな反射が発生する理由は何だと思いますか?コネクタ端面がお互いに突き当たらず、間に隙間が空くためです。
なぜ隙間が空くと反射が大きくなるのでしょうか。それは光が通る光ファイバ(ガラス)と隙間(空気)の屈折率が違うために、その境界面で反射が大きくなるからです。
図4-2に示すように屈折率の差により約4%、反射減衰量としては14dBの反射が発生します。僅か4%?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、光ファイバ通信においては大きな問題となるのです。
隙間が空く理由としては、例えば、コネクタ端面にゴミが付着または汚れていて端面が突き当らなかったり、半差し(コネクタ端面が最後まで突き当たらない状態)になっていたりすることが挙げられます。
図4-2 故障位置探索例
次に、なぜ反射が大きいと高速のデータ通信で問題になるのかという点について、図4-3で説明します。
従来の低速データ転送では1ビットのデータ間隔(時間窓)が長かったですが、高速になると時間窓が短くなるため受信器でのデータ判別が厳しくなってきます。
更に、回線に大きな反射があるとその間を輻輳するような信号が多数発生します。反射した一つの信号のレベルは低いですが、複数の輻輳した反射信号が重ね合わさり、ゼロのレベルを持ち上げてしまうと、ギリギリの性能で判別している受信器で誤判断し、エラーとなる場合があるようです。そのため、高速回線においては、反射減衰量を抑える必要があります。
図4-3 高速化と反射によるエラー発生
光源と光パワーメータの中には回線全体の反射減衰量が測定できる機種もありますが、途中のコネクタ接続点での反射減衰量を測定することはできません。
回線途中の反射減衰量測定は図4-4に示すように入射光パワーに対する反射光パワーの割合として、OTDR(光パルス試験器)で実施できます。既存回線の通信速度を上げる場合は、きちんと管理された回線であることを確認した方が良いと思います。
図4-4 OTDRによる反射減衰量の測定
(2)通信パワーの増加による問題
近年では無中継で長距離伝送するために送信機の出力パワーが以前より増えています。また、波長多重通信のように一つの光ファイバ中に複数の波長を入れて大量のデータを送ったりすると、トータルパワーはその波長の数に比例して増えます。
今まではコネクタ端面に多少の汚れが付いていてもあまり問題にならなかったのですが、このような通信パワー増加によって、
汚れが炭化 → コネクタ端面に焼付き → 損失増加 → 通信断
という問題が発生することもあります。
そこで、今まで以上にコネクタ端面のクリーニングが重要視されていますが、肉眼で見ただけでは端面が汚れているか綺麗なのかはわかりません。
400倍くらいに拡大できるコネクタ端面検査器というものがあり、これで見るとはっきり汚れの状況を確認できます。わざとコネクタ端面を手に触れさせて、肉眼で見ても汚れはわからないと思いますが、コネクタ端面検査器で見ると図4-5のように汚れが付いていることがわかります。
図4-5 コネクタ端面の汚れ例
これを専用のクリーナでクリーニングすると、図4-6のように汚れが拭き取れたことがわかります。
光接続作業においてはクリーニングが重要です。光接続作業をされる場合は、一にクリーニング、二にクリーニング、三四が無くて、五にクリーニングのようです。
図4-6 クリーニング後のコネクタ端面
※本記載内容は2021年7月1日現在のものです。
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