無線設備規則<第5弾> ~ 空中線電力 ~
参考: 無線設備規則 <第1弾> ~周波数の許容偏差~
無線設備規則 <第2弾> ~占有周波数帯幅~
無線設備規則 <第3弾> ~隣接チャネル漏えい電力~
無線設備規則 <第4弾> ~スプリアス~
空中線電力
無線設備規則は、周波数、占有周波数帯幅、スプリアス発射、空中線電力、隣接チャネル漏えい電力など無線設備等に関する条件を規定する総務省令です。
第5弾では、空中線電力についてご紹介します。
私たちの身の回りには携帯電話、パソコン、テレビ放送、ラジオ、消防/列車/警察など公共業務無線、気象/船舶/航空/車載のレーダーなど多種多様な無線が存在します。
それぞれの無線機器は、対象のサービスや通信規格によって送信する空中線電力が「指定値」として規定されています。さらに総務省の無線設備規則の第十四条では「空中線電力の許容偏差」が規定されています。つまり指定値に対する誤差(偏差)を測定してそれが許容値の範囲内であれば良い、という判断になります。
図1:空中線電力の指定値と許容偏差
(図の無線機器と指定値・許容偏差はイメージです)
「空中線電力」とは?
空中線電力とは、空中線(アンテナ)に供給される電力です。電力は無線機の空中線(アンテナ)端子で規定されることが一般的です。空中線端子で測定した電力を「空中線電力」といいます。
空中線端子とは一般的にアンテナやケーブルを接続するコネクタ部分を示します。多くの場合は、無線機器に直接コネクタが付いていますが、無線機器に短いケーブルがあってケーブルの先にコネクタが付いているケースもあります。
空中線電力は、尖頭電力・平均電力・搬送波電力又は規格電力などいろいろな定義があります。無線機器の電波形式(変調方式)の種類によって、適用される定義が異なるため、対象の無線機器の無線設備規則や証明規則を確認してください。
図2:無線機器の空中線端子
「電力」とは?
次に、「電力」とはなんでしょうか?
例えば、抵抗器に電圧を印加すると電流が流れます。電流が流れると抵抗器から熱が発生します。この熱が電気の仕事量(電気のエネルギー)、つまり電力量でありW(ワット)単位で表されます。
電力=電気的なエネルギー(仕事量)
図3:電力と電圧・電流・抵抗の関係
また、無線の世界では電力の単位として「W」と共に、「dBm」という単位を利用します。dBmは1mWを基準とした対数単位で、下記の式で計算します。
X [mW ]=10×log(X ) [dBm ]
計算例
1W = 1000mW = 30dBm 1mW = 0dBm 1μW = 0.001mW = -30dBm |
「空中線電力」測定は重要!?
もし仮に、空中線電力が規定されておらず自由な電力で運用できるとしたらどうなるでしょう?
第3弾・第4弾でご紹介したように、スプリアスや隣接チャネル漏えい電力の許容値は、搬送波電力に対する「相対値」で規定されているケース※が多いです。
(※無線機の出力が高い場合は相対値、低い場合は絶対値で規定されているケースが多いですが例外もあります。)
相対値というのは、搬送波を基準としてそれよりも「xxdB低いこと」という判定になります。つまり基準である搬送波のレベルが変わると、スプリアス測定や隣接チャネル漏えい電力の許容値も同じように変わることになります。(図4:イメージ) そのような電力が他の無線機器が利用している周波数帯に漏れてくると、その通信を妨害する可能性があります。
このようなトラブルが起きないように、それぞれの無線機器の空中線電力は「指定値」が規定されており、その誤差(偏差)が許容値の範囲に収まるように運用することが重要です。
きちんと測定して、お互いに迷惑をかけないようにして電波を有効活用しましょう。
図4:空中線電力と隣接チャネル漏えい電力(相対値)の関係イメージ
※本記載内容は2021年1月1日現在のものです。
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