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隣接チャネル漏えい電力の許容値

許容値について、図2を例としてもう少し詳しく解説します。
狭帯域デジタル方式の無線設備の場合、許容値は下記のように規定されており無線機の搬送波電力によって異なります。

・無線機の出力が1 W以下の場合、搬送波電力よりも45dB以上低い(-45 dBc)こと
・無線機の出力が1 Wを超える場合、32uW以下(≒-15 dBm)または
 搬送波電力より55 dB以上低い(-55 dBc)こと

前者の場合、搬送波電力(図2-①)と隣接チャネル漏えい電力(図2-②)を測定し、その差(図2-③)を計算して測定結果とします。測定機能があれば計算も不要です。

後者の場合は条件が2つあります。
32 uW以下(≒-15 dBm)」は隣接チャネル漏えい電力(図2-②)を測定結果とします。
55 dB以上低い(-55 dBc)」は前者と同じ測定手順ですが、無線機出力により許容値が変わります。
仮に、無線機出力が1W強(≒30 dBm)の場合、30[dBm]55[dBc]=-25[dBm]となりますが「32 uW以下(≒-15dBm)」の方が条件が易しいのでこちらを適用します。
無線機出力が10 W(≒40 dBm)の場合、40[dBm]55[dBc]=-15[dBm]となり「32 uW以下(≒-15 dBm)」と同じ条件になります。

つまり

1 W以下は相対値(-45 dBc
1 W10Wは絶対値(-15 dBm
10 W以上は相対値(-55 dBc

というように同じ無線設備でも出力によって許容値が変わるということです。
対象となる無線設備の規格および許容値の条件を確認するようにご注意ください。



202011測定のツボ図2.png

                                                                           ①搬送波電力:絶対値 [dBm]

                                                                           ②隣接チャネル漏えい電力 (ACP):絶対値 [dBm]

                                                                           ③隣接チャネル漏えい電力比 (ACLR):相対値 [dBc]

2: 隣接チャネル漏えい電力 測定画面例

(チャネル間隔 25 kHz、測定帯域幅 16 kHz の例)


無線設備規則

「隣接チャネル漏えい電力」は無線設備規則の第五十七条などに記載されています。(対象の無線設備により異なります)

一般的には隣接チャネルとは、割り当て周波数を中心として上下それぞれチャネル間隔だけ離れた周波数を中心とします。しかし電力を測定する周波数幅は、チャネル間隔と同じとは限りません。下記は許容値の例(一部抜粋)です。必ず評価する無線設備の試験仕様を確認してください。


チャネル間隔  測定帯域幅
6.25/25 kHz 4.8/16 kHz <狭帯域デジタル>
100/200・・・/500 kHz 100/200・・・/500 kHz 920 MHz帯特定小電力無線>
20/40/80 MHz 20/40/80 MHz <無線LAN



202011測定のツボ図3.png

3: 隣接チャネル漏えい電力 測定画面例(拡大)

(チャネル間隔 25 kHz、測定帯域幅 16 kHz の例)


隣接チャネル漏えい電力の測定:

隣接チャネル漏えい電力の測定は、無線設備によって測定方法や測定系が異なります。一例として狭帯域デジタル方式の無線設備の場合をご紹介します。(図4:測定系)

202011測定のツボ図4.png

4:隣接チャネル漏えい電力の測定系統図


試験機器は通常の通信状態(変調信号)にします。変調信号は擬似信号発生器を用い、運用時の送信速度にて標準符号化試験信号(PN9段符号)によって変調します。試験機器にテスト用のPN9段符号の変調信号を出力する機能があれば、外部の擬似信号発生器は不要です。

測定器はスペクトラムアナライザを利用します。無線設備の証明規則等では、スペクトラムアナライザのスパン(周波数幅)をチャネル間隔に設定し、検波モードをポジティブに設定して、最初に自身のチャネルを掃引した全データ点をコンピュータに取り込んで「全電力」を計算します。同様に上側隣接チャネル・下側隣接チャネルも電力を測定して計算します。最後に、自身のチャネルと上側隣接チャネルの電力比を計算し、同様に自身のチャネルと下側隣接チャネルも算出することになっています。

しかし、ACP/ACLRを測定する機能が備わっているスペクトラムアナライザであれば、外部のコンピュータで計算する必要もなく簡単に測定結果を確認できます。


測定器を選択する際の注意点:

特に狭帯域無線(チャネル間隔が6.25/12.5/25 kHzなど)の場合には、測定で利用するスペクトラムアナライザの「位相雑音性能」に注意してください。

「位相雑音性能」については過去のツボでご紹介していますのでそちらをご覧ください。
「位相雑音性能」は、数kHz~数百kHzという搬送波に近い部分に存在するノイズです。測定器の「位相雑音性能」が悪いと、無線機の性能がどんなに良くても測定器の性能が結果に影響するため、許容値を満たさないリスクがあります。

5は弊社のスペクトラムアナライザ MS2830Aを使った測定画面例です。位相雑音性能を良くするオプションを搭載した場合(5-a)と搭載していない場合(5-b)の測定画面例です。

仮に、隣接チャネル漏えい電力比の許容値が「-55dBc」だとすると、オプション非搭載(図5-b)はマージンがありませんが、オプション搭載(図5-a)はマージンが20 dB程度あるので余裕をもって測定できることがわかります。


202011測定のツボ図5-a.png 202011測定のツボ図5-b.png

5-a: 隣接チャネル漏えい電力 測定画面例

MS2830A:低位相雑音オプション Opt.066 あり)

5-b: 隣接チャネル漏えい電力 測定画面例

MS2830A:低位相雑音オプション Opt.066 なし)



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アンリツ株式会社 通信計測カンパニー グローバルセールスセンター 通信計測営業本部 第1営業推進部

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