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スペアナのカタログを読むときに<第3弾> ~ ダイナミックレンジ ~

                                                                                          <参考> 第1弾: 2次高調波歪み はこちら
                             第2弾: 3次相互変調歪 はこちら 

スペクトラムアナライザ(以下、スペアナ)を選定するとき、その性能を比較するためにデータシート(Technical Data Sheet)をご覧になる事が有ると思います。このデータシートに書かれている項目で、皆さんが比較的難しく感じていると思われる項目について、3回シリーズでお届けします。

シリーズ最終回の今回は、「ダイナミックレンジ(Dynamic range)」です。

ダイナミックレンジという言葉は、比較的多く使われる言葉ですのでご理解されている方も多いと思います。ちょうど逆光の人物写真のように明るい陽射しの中で、同時に影の部分も有るような場合、明るい方に合わせると影の部分は黒くつぶれてしまい、影に合わせると明るいところが真っ白に飛んでしまい両立するのは難しい、このように信号の強い部分と弱い部分を両立できる範囲がダイナミックレンジで、強い信号と弱い信号の差が広く捉えられることをダイナミックレンジが広いと言い、望ましいとお分かりいただけると思います。

スペアナでも同様に強い信号と弱い信号を同時に扱えることが望ましいのですが、現実的には性能上の限界に応じて強い電波が入力されると信号が歪み、歪まないようにすると弱い電波が測定できなくなります。


それでは、スペアナにおいてはこのダイナミックレンジはどのように定義されるのでしょうか。
アンリツのハンドヘルドスペクトラムアナライザMS2090Aでは、次のように規定されています。

202008測定のツボ図1.png

この意味は、RBWを1 Hzにした状態で、TOIとDNALの差の2/3をダイナミックレンジとすると定義したとき、2.4 GHzにおいて、106 dBよりも広い。という意味です。(図1)

202008測定のツボ図2.png                                                                                              図1                     

TOIは前回解説しましたが、DANLとは、Displayed Average Noise Level、日本語では、表示平均雑音レベルと言い、スペアナのRBWが1 Hzの場合のノイズレベルを表しています。
MS2090Aでは、DANL規格が、次のように規定されています。


202008測定のツボ図3.png

(条件はデータシートを参照ください)

この機種のTOIは、(ページ下部<参考>)

   202008測定のツボ図4.png

と規定されているので、
2.4 GHzにおけるダイナミックレンジを計算すると、
(TOI-(DANL))x2/3 =(+14 dBm-(-145 dBm))x2/3 =106 dB
となり先程の規格値と同じ値が導き出されます。

スペアナ性能を比較する際、メーカや機種によって定義が多少異なりますので、一概に比較するのが難しいかもしれませんが、それぞれの定義を読み取りながら比較して頂ければと思います。
尚、実際の測定においては使用する
RBW
に応じてノイズフロアのレベルが変化しますのでご注意ください。
(例:RBWが1 MHzの場合、1 Hzのときと比べ60dBノイズフロアは高くなります。)

これまで3回に渡り皆さんがスペアナのカタログを読むときに理解しにくいと思われる3項目を解説しました。
これら以外でも皆さんが疑問に感じている項目があれば機会を改めて解説させていただきたいと思います。


<参考>前回TOIの解説より。

アンリツの最新ハンドヘルドスペクトラムアナライザ MS2090Aでは、TOIを次のように規定しています。

Third-Order Intercept (TOI)
(–20 dBm tones 2 MHz apart, 0 dB input attenuation, preamp OFF, reference level –20 dBm)
2.4 GHz       +14 dBm minimum
50 MHz ~ 20 GHz     +20 dBm typical

これは、スペアナに2 MHz離れた-20 dBmの強さの信号を2波入力し、内蔵アッテネータ0 dB、プリアンプOff、リファレンスレベル-20 dBmの状態から算出したTOIです。


 <参考リンク>
スペクトラムアナライザのカタログを読むときに 第1弾:2次高調波歪み(2020年6月号)
スペクトラムアナライザのカタログを読むときに 第2弾:3次相互変調歪  (2020年7月号)


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 最後に、確認クイズです!

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問題:以下文章中の①と②に入る値はそれぞれ何でしょう?


アンリツのハンドヘルドスぺクトラムアナライザ MS2090Aのダイナミックレンジは、
「RBWを1 Hzにした状態で、TOIとDNALの差の2/3をダイナミックレンジとすると定義したとき、(➀) GHzにおいて、
(②) dBよりも広い」と規定されています。」


正解者の中から10名様にアンリツ特製「真空2重構造ステンレスタンブラー330ml」を差し上げます。

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*当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。

  回答時に会社名、部署名、氏名、郵便番号、住所、電話番号のご記入をお忘れなく。

  回答とともに今後のコラムで取り上げて欲しいテーマのリクエストやご感想なども添えていただけると幸いです。

クイズの回答を送る。 終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。

締め切り2020年9月10日(木)。 みなさまの回答お待ちしております。


※本記載内容は2020年8月1日現在のものです。


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アンリツ株式会社 通信計測カンパニー グローバルセールスセンター 通信計測営業本部 第1営業推進部

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