
スペクトラムアナライザのカタログを読むときに<第2弾> ~ 3次相互変調歪 ~
<参考>⇒ 第1弾:2次高調波歪み はこちら
スペクトラムアナライザ(以下、スペアナ)を選定するとき、その性能を比較するためにデータシート(Technical Data Sheet)をご覧になる事が有ると思います。このデータシートに書かれている項目で、皆さんが比較的難しく感じていると思われる項目について、3回シリーズでお届けします。
第2回目の今回は、「3次相互変調歪(TOI、Third Order Intercept)」です。
前回の「2次高調波歪み」の説明の中で、歪について述べました。今回の「3次相互変調歪(TOI)」もスペアナで起こる一種の「歪」現象で、スペアナの性能指標の一つとなります。
スペアナに対して、周波数間隔の狭い二つの電波F1とF2を入力した場合、下図のようにF3とF4の周波数に歪成分の信号が現れます。
F3, F1, F2, F4は等間隔で、F3の周波数は、F3=F1-(F2-F1)、F4の周波数は、F4=F2+(F2-F1)となります。
このとき、F1とF2に入力している信号の強さを少し大きくするとF3とF4に現れる信号はその3倍大きくなります。
ですので、F1とF2を徐々に大きくしてゆくといずれF1~F4の信号が同じ強さになってしまうように見えます。
下図の赤と青の破線の交点がそれです。
このときのF1とF2の入力信号の強さをスペアナの性能として定義したものを、TOIまたはIP3と呼びます。
TOIは仮想の点であって、実際にここまでスペアナの入力信号の強さを許容する指標ではありません。
実特性は赤と青の実線のように飽和を起こしますが、歪み特性を把握するには便利な指標として用いられています。
当然スペアナの性能としてはTOIが大きな値である程、歪が少ない優れたスペアナであると言うことが出来ます。
例えば、アンリツのハンドヘルドスペクトラムアナライザMS2090Aでは、次のように記載されています。
Third-Order Intercept (TOI)
(–20 dBm tones 2 MHz apart, 0 dB input attenuation, preamp OFF, reference level –20 dBm)
2.4 GHz +14 dBm minimum
50 MHz ~ 20 GHz +20 dBm typical
これは、スペアナに周波数が2 MHz離れた-20dBmの強さの信号を2波入力し、内蔵アッテネータ0dB、プリアンプOff、リファレンスレベル-20dBmの状態から算出したTOIです。
今回のTOIは、それでも「難しい、良く分からない」と思われたかもしれません。
次回説明するスペアナのダイナミックレンジと深く関係する性能指標ですので、今回はこの値が大きいと歪に強いスペアナであると認識をしておいていただければ結構だと思います。
次回は「スペアナのカタログを読むときに」シリーズの最終回、ダイナミックレンジについて解説します。
※本記載内容は2020年7月1日現在のものです。
<参考リンク>
スペクトラムアナライザのカタログを読むときに 第1弾:2次高調波歪み(2020年6月号)
【 ご紹介 】 |
◆ 高性能ハンドヘルドスペクトラムアナライザ MS2090A
トップクラスの表示平均ノイズレベル、3次相互変調歪(TOI)、位相雑音性能を有し、
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