スマホってスペアナで測れるの?<Bluetooth®通信の場合>
*文中にてスペクトラムアナライザを「スペアナ」と略称表記
今月のコラムは、「スマホを測る」の第3弾で、スマホに搭載されている”Bluetooth®通信”を測れるか、です。
(第1弾はこちら→ 2019年4月号「スマホってスペアナで測れるの?<ケータイの場合>」)
(第2弾はこちら→ 2019年7月号「スマホってスペアナで測れるの?<無線LANの場合>」)
最近のスマホの機能としてBluetooth通信は、ハンズフリー通信、ワイヤレスイヤホン、データ通信など
無くてはならない通信となってきました。
最近のスマホではヘッドホン端子を無くしたものも増えてきており、Bluetoothを介した音楽再生、
ワイヤレスヘッドセットを使用している人を多く見かけるようになりました。
Bluetoothは、IEEE802.15.1という規格で定義され、使われている周波数は、2.4GHzのISMバンドのみで通信を行います。
他の通信方式で込み合っているISMバンドにおいて使えるように、Bluetoothには、FH(Frequency Hopping)方式が
採用されています。
このFH方式とは、使用できる周波数帯域(2.4GHz帯の約80MHz内)において、使用する周波数をランダムに
高速(1600回/秒)に切り換えることで、対妨害・干渉に強く、傍受されにくい方式となっています。
図1 FH(Frequency Hopping)方式のイメージ
(画像はクリックして拡大可能)
このBluetooth信号をスペアナで測定することは、かなり困難です。
周辺の電波をシールドボックスなどで防いだとしても前述したように、使用される周波数がランダムに変化するため、
通常の周波数を掃引するスペアナでは、測定することはできません。
このような信号を測定するためには、約80MHz帯域を同時に測定が出来るリアルタイムスペアナが必要になります。
図2は掃引型スペアナで、図3はリアルタイムスペアナでそれぞれ同じ状態で測定した波形データですが、
掃引型では見えていない電波もリアルタイムスペアナでは捉えられていることが分かります。
図2 2.4GHzのいろいろな電波が瞬間的に見える、掃引型スペアナの波形データ
(画像はクリックして拡大可能)
図3 2.4GHzのいろいろな電波を捉えた、リアルタイムスペアナの波形データ
測定される頻度が高いと濃く(赤く)、低いと薄く(青く)色分けされます。
(画像はクリックして拡大可能)
そしてこのリアルタイムスペアナを使えば、どのように周波数を切り替えながら通信しているかを確認することができます。
図4 FH(Frequency Hopping)方式を捉えるための測定例
(画像はクリックして拡大可能)
図5 FH(Frequency Hopping)方式を捉えたリアルタイムスペアナの波形データ
(注:図4の試験系にて、携帯だけでなくMT8852Bの信号も測定した結果になります。)
(画像はクリックして拡大可能)
皆様がお持ちのスマホをスペアナで測る、と題して説明してきましたが、いかがでしたでしょうか?
3G、4G、5G、無線LAN、Bluetooth…日常当たり前のように使っているスマホにはこのように様々な通信機能が
搭載されており、これらが普通に使えるためにアンリツの計測器は重要な役割を担っています。
まとめ
・ ケータイは、実際の基地局の電波が届かない環境を作り、基地局の代わりにスマホと通信を行うことができるテスタで
周波数を指定し測定する。
・ 無線LANは、2.4GHz帯はISMバンドでも使われているため、他の電波が届かない環境を作り、
周波数を固定することができるテスタ等で周波数を指定し測定する。
・ Bluetoothは、FH方式が採用されているため、周辺の電波が届かない環境を作り、
掃引型ではないリアルタイムスペアナを使うことで信号の測定が可能。
※本記載内容は2019年8月1日現在のものです。
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