スマホってスペアナで測れるの? ≪ ケータイの場合 ≫
今月(2019年4月)、次世代携帯電話サービスである " 5G "(第5世代)の周波数割り当てが決まりました。
このサービスは、今お持ちのスマートフォン(以下、スマホ)よりも100倍通信が速くなるだけでなく
低遅延、多接続といった特長により、自動運転や遠隔制御・診療に使われるなど
全く新しいサービスが期待されています。
このように新しい無線サービスを行うために、新しい周波数が割り当てられます。
皆さんがお持ちのスマホにもたくさんの無線システムが搭載されていますので、いろいろな周波数が使われています。
今回の測定のツボは、「スマホに搭載されている各種無線方式をスペクトラムアナライザで測定できるのか?」という内容です。
(1) スマホに搭載されている無線方式とその割当周波数
① 携帯電話 (音声・データ通信)
スマホのメイン機能である携帯電話の周波数ですが、ユーザとやり取りされるデータの増大に伴い、
使用される周波数帯がどんどん増えてきました。
現在使われている3G、4G(第3、第4世代)
・700MHz~900MHz帯
・1500MHz(1.5GHz)帯
・1700MHz(1.7GHz)帯
・2000MHz(2.0GHz)帯
・3500MHz(3.5GHz)帯
携帯電話だけでもこれだけたくさんの周波数を使った無線機能を片手サイズの大きさに納めてしまうのですから、
スマホ技術者は本当にすごい!と思います。
ちなみに、これに加えて、今月5G用に割り当てられた周波数は、こちらです。
・3700MHz(3.7GHz)帯
・4500MHz(4.5GHz)帯
・28000MHz(28GHz)帯
② 無線LAN、Bluetooth®通信
昨今の無線LAN経由の通信は、携帯電話網の通信料を下げるために、とても重要な通信ルートとなっています。
無線LANで使用される周波数は、以下2つの周波数帯になります。
・2400MHz(2.4GHz)帯
・5000MHz(5GHz)帯
これらの周波数帯は、①の携帯電話とは異なり、他の通信システムと共用しなくてはいけない周波数帯となっています。
例えば、2.4GHzは、ISM(Industry Science and Medical)バンドと呼ばれる電気通信以外の
工業・科学・医療に使用してよい周波数帯なので、" 混雑しやすい " 周波数となっています。
イヤホン端子を無くしたiPhoneの登場により市場が活況なワイヤレスイヤホンはBluetoothを使用していますが
この2.4GHz帯のISMバンドを使用しています。
図1:各周波数の割り当て
(画像はクリックして拡大可能)
では、スぺクトラムアナライザ(以下、スペアナ)にアンテナをつけて、スマホの電波を測定してみましょう。
(2) スマホを測る (ケータイ方式)
結論を先にお話ししますと、これだけたくさんの周波数帯で通信をしていますので、
電波が出ているかの確認は出来ますが、非常に測定はしづらい状況になります。
それは、スマホで使用する周波数は、接続されている基地局からの指示で周波数が変わる仕様になっているためです。
例えば、700MHz/1500MHzの場合
スマホから700MHz帯に電波が出ていたのでそれを測定しようとしている間に、
基地局から「1500MHz帯に移れ」、と指示が来てしまえば、700MHzから信号がいなくなってしまいます。
また実際には、周りにいるスマホの電波も含めて測定することになるので、どれが自分のスマホの電波なのか、
スペアナの画面だけでは判断できません。
ということで、結論としては、スペアナだけでは、正しい測定が出来ません。
図2:正しい測定が出来ない例
◆1:「700MHzに電波発見! よし、測ってみよう。でも他にも電波がたくさんあるなぁ…」
◆2:(基地局が700MHz → 1500MHzに指示変更)
◆3:「あれっ? 700MHzから信号が消えた! 測れませんでした…」
例えば、以下を実施することで、スマホの携帯電話の電波を正しく測定できるようになります。
・ 実際の基地局の電波(700/1500MHz)が届かない環境 (シールドルーム or シールドボックス) を用意する。
・ 基地局の代わりにスマホを制御するテスタ (弊社製品型名例:MT8821C) を用意して、周波数(700MHz)を指定する。
図3:正しい測定が出来る例
(画像はクリックして拡大可能)
いかがでしたでしょうか、「スマホってスぺアナで測れるの?」
今回は ” ケータイの場合 ” をお届けしましたが、
続編として ” 無線LAN、Bluetoothの場合 ” も今後お届けする予定ですので、そちらもお楽しみに。
※本記載内容は2019年4月24日現在のものです。
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