測定器選定のコツ <ベクトルネットワークアナライザ編>
測定器を選定する際、いきなりカタログやデータシートを調べてみても 「何をどう比較したら良いのか分からない・・・」
そんなかた向けに、今回はベクトルネットワークアナライザ(以下、VNA)を選定する時におさえておきたいポイント
についてご紹介します。
VNAは、電子回路網を解析する機器で、デバイスなどのインピーダンスや減衰量を測定し性能を評価する測定器です。
VNAを選ぶときに考慮するべきポイントについて、代表的な5つの項目を挙げて
弊社製品データシートをサンプルにしながら、ご紹介します。
1. 周波数範囲
様々な周波数モデルがあるので、測定したい周波数範囲に対応したモデルを選択する。
弊社ラインナップ例(一部)*画像をクリックすると一覧が表示されます。
◆ ワンポイントアドバイス
研究や開発では、デバイスの特性を知るために少し広めの周波数範囲をカバーする測定器を選定するのもポイントです。
使用する周波数範囲以外でどのような性能になっているか知ることも大切です。
アンプなどの評価では、利得がどのぐらいの周波数まで伸びているか、使用する周波数外で異常発振していないか
などの確認をします。
また、今後のデバイスの開発スケジュールによっては、今後を見越した周波数帯域をカバーしたモデルを検討する必要があります。
2. ダイナミックレンジ
フィルタ等の測定において測定したい減衰量が十分測定可能なダイナミックレンジは確保されているか?
ダイナミックレンジには以下の2種類があります。
① 「システムダイナミックレンジ」 = 「最大Port Power」 – 「ノイズフロア」
② 「レシーバダイナミックレンジ」 = 「レシーバ圧縮」 – 「ノイズフロア」
「Port Power」:VNAのPort1または、Port2からの信号の出力レベル
「最大Port Power」:VNAのPort1または、Port2からの信号の最大出力レベル
「ノイズフロア」:小さい信号を測定できる限界レベル
「レシーバ圧縮」:VNAの受信部がひずむことなく測定できるレベル
しかし、このダイナミックレンジですが、一般的に周波数範囲によって異なるだけではなく、
追加するオプションによって変わることがあります。
(画像はクリックして拡大可能)
◆ ワンポイントアドバイス
ダイナミックレンジは、周波数範囲だけでなく、追加するオプションによって変わることがあるので
オプション構成と合わせて確認しましょう。
3. 掃引速度
校正の有無、IF帯域幅(IFBW)に加え、測定ポイントの組み合わせによって掃引速度が異なります。
IF帯域幅とはVNA内部のフィルタ帯域幅のことで、狭い帯域を選択すれば、ダイナミックレンジが広くなりますが、
測定時間は長くなります。
広い帯域を選択すれば、ダイナミックレンジは狭くなりますが、測定時間は短くなります。
例えば、狭いIF帯域幅を選択し測定ポイントを多く設定すれば詳細な測定が可能になりますが、測定時間は長くなります。
逆に広いIF帯域幅を選択し少ない測定ポイントを選択すれば測定時間は短くすることができますが、簡略な測定になります。
(画像はクリックして拡大可能)
◆ ワンポイントアドバイス
ダイナミックレンジと測定時間のどちらを優先するのか(どのくらいが最適なのか)は、
被測定物の性能や測定するシチュエーション(研究用なのか、製造検査用)によって異なってきます。
さまざまな設定をお試しいただき、最適な設定を検討しましょう。
とはいえ、「ダイナミックレンジは広いほうが良いけど、測定時間は数値で示されても実感がわかないよ」という方は、
デモ機などで試して体現してみるのも良いと思います。
4. 校正キット
校正キットはVNAにおける測定に不可欠なアイテムです。従来からある手動校正キットに加え、自動校正キットも用意されています。
それぞれの特徴は「ワンポイントアドバイス」をご覧ください。
なお、校正を行う場合は、同軸コネクタが付いたもの、導波管、コネクタのないマイクロストリップの基盤やチップ部品など、
それぞれ被測定物の測定に適した校正手法で行いましょう。
【参考記事】 校正に関するコラムは、こちら
手動校正キット
自動校正キット
(画像はクリックして拡大可能)
◆ ワンポイントアドバイス
手動校正キットには、コネクタのオス、メス両方に対応したモデルやコネクタのオス、メスに限定した低価格モデルがあります。
また、スピーディかつ再現性よく校正するには、自動校正キットが有効です。
手動校正キット |
自動校正キット |
|
価格 |
〇 |
△ |
再現性 |
△ 熟練度が必要 |
〇 初心者でも簡単 |
校正時間 |
△ 校正デバイスごとに付け替えが必要 |
〇 校正デバイスの付け替え無し |
5. どのような形のベクトルネットワークアナライザを選択するか
屋内にて使用するのかそれとも屋外にて使用するのか。
ベンチトップモデルは、ダイナミックレンジや掃引速度など優れた性能を備えている製品が多いですが、
筐体の大きさや電源の確保の必要性から、移動や利用シーンに制限があります。
屋外などの電源のないところで使用することが多い場合は、持ち運びに便利、バッテリー駆動のハンドヘルドモデルを選択すると良いでしょう。
また、最近ではディスプレイやキーパッドをなくし、外部PCにUSB接続して制御するモデルもあります。
ボディを小型化できるので低コスト・省スペース化だけでなく、被測定物と直結して測定すれば、
ケーブル接続で発生してしまうRF性能のロスを避けることもできます。
ベンチトップモデル ハンドヘルドモデル
外部PCで制御するモデル 外部PCで制御するモデル
◆ ワンポイントアドバイス
性能や可搬性、コストや利用シーンなど、重視する目的に応じて選択しましょう。
※本記載内容は2018年11月1日現在のものです。
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◆ お問い合わせ先
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アンリツ株式会社 計測器営業本部 営業推進部
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