ネットワークアナライザで測定するSパラメータってなに？

ネットワークアナライザ（以下ネットアナ）で測定できる代表的なものとして、Sパラメータと言う言葉を良く聞きます。

また、ネットアナは伝送と反射特性を測定するものとも言われます。

　Sパラメータと伝送/反射特性との関係とは？

本コラムでは、上記の疑問を「2ポート」のネットアナを例に簡単な図解を用いて説明します。

1. Sパラメータとは？

Sパラメータは英語でScattering Parameterの頭文字の“S”を取り、Sパラメータ（もしくは簡単にSパラ）と呼ばれています。

Scatteringとは「散乱」と言う意味があり、行列の数式で表すと以下のようになります。

*2つの入出力端子を持つ電気回路で、入力方向に進む信号の振幅a1,a2と

  出力方向に進む信号の振幅b1,b2とした時の散乱特性の行列です。

これと伝送/反射特性を結びつけるのは、非常に難しくなります。

そこで、実際のネットアナで測定する際の接続図より解説することにします。

2. ネットアナの接続図から分かるSパラメータ（伝送/反射）

以下が代表的な2端子デバイス（入出力端子を有したデバイス）の測定時の接続図です。

（画像はクリックして拡大可能）

・ ネットアナのポート１から信号を出力して測定を行う場合を、「順方向の測定」と言い、

   逆にポート2から信号を出力して測定を行う場合を、「逆方向の測定」と言います。

・ S21はポート１より出力された信号がポート2側で受信されるもので、「順方向の伝送特性」と呼ばれます。

   同様にS11はポート１から出力された信号がポート1側で受信されるので、「順方向の反射特性」と呼ばれます。

・ S12はポート2より出力された信号がポート1側で受信されるもので、「逆方向の伝送特性」と呼ばれます。

   同様にS22はポート2から出力された信号がポート2側で受信されるので、「逆方向の反射特性」と呼ばれます。

・ 上記よりSパラメータを表すSxxの数字の見方は、以下のようになります。

3. ネットアナの内部構造から分かるSパラメータ測定原理

1項でSパラメータを表すものとして、被測定物（DUT）への入力方向に進む信号の振幅と、

被測定物から出力される信号の振幅から、その特性を表すことができると記載しました。

また2項では、ネットアナの各ポートから見たSパラメータの表し方を記載しました。

では、ネットアナの内部構造から、上述の2つの関係の相関が可能か検討してみます。

下図は順方向の測定を行う際の、ネットアナからの信号の入出力を表しています。

（画像はクリックして拡大可能）

・ S11はポート1からの出力つまり被測定物（DUT）へ入力される信号（a1の受信部で確認）と、

  被測定物の入力端子で反射（出力）された信号（b1で受信）

  または被測定物を通過（伝送または出力）した信号（ポート2側のb2で受信）、

  それぞれの比で順方向の反射特性S11=b1/a1と伝送特性S21=b2/a1が測定できることになります。

実際の測定に当たっては、測定するための基準を作る「校正」作業が必要となります。

校正に関しては第12回のコラムをご参照ください。 →　ネットワークアナライザ測定前”校正”は、なぜ必要？

 ※本記載内容は2018年3月1日現在のものです。