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地デジが映らないのはナゼ? -前編-

今回は、メルマガ読者の方からご要望をいただいた地上デジタルテレビ放送(以下、地デジ放送)の電波障害についてです。アナログ放送が終了してから既に10年近く経ちましたが、未だに電波干渉等による視聴障害のニュースを目にします。そこで、視聴(受信)障害の原因原因を調査する上で必要な測定知識について前編後編に分けて以下4つのケースをご紹介します。

地デジ放送の視聴(受信)障害の主な原因
➀ 電波の遮断や遅延
➁ 古いテレビ視聴設備(アンテナやブースタ)と携帯電話
③ 国内の他の地域から到来する電波干渉
④ 隣国等からの到来する電波干渉

前編の今回は「① 電波の遮断や遅延」と「② 古いテレビ視聴設備(アンテナやブースタ)と携帯電話」について取り上げます。(③④は後編でご紹介します。)


障害事例① 電波の遮断や遅延
2020年2月頃、秋田県で「風力発電でTV受信障害?」というニュースがありました。
これは、本来電波の通り道である場所を風力発電の設備が塞いでしまい電波の信号レベル低下が発生しているものと思われます。また、電波には、直接波と反射波(遅延波)があり、建造物による反射波が直接波に加わり、電波障害を引き起こす可能性があります。

「風車の影響に加え、海の波で電波が弱くなるなどさまざまな要因が重なった可能性がある」という指摘もあります。

202102測定のツボ図1.png
                     (クリック拡大)
                                       出典:総務省ウェブサイト

                

障害事例② 古いテレビ視聴設備(アンテナやブースタ)と携帯電話
地デジ放送の完全移行により空いた周波数は、携帯電話の周波数に利用されています。携帯電話で使用している周波数帯の中には、昔アナログテレビ放送が使用していた周波数帯が含まれています。このためアナログテレビ放送時代の古いテレビ視聴設備をそのまま使用していると携帯電話の信号が干渉する事が予想されています。

202102測定のツボ図2.png

出典:総務省ウェブサイト   


対象地域には注意喚起のため”700MHz利用推進協会”よりリーフレットが配布されていますので、ご覧になった方もいらっしゃると思います。
この対策として710MHz以下の周波数だけを通すフィルタをブースタに取り付けたり、動作周波数が狭い新型のブースタに交換することになります。

では、これらの視聴(受信)障害の調査はどのように行うのでしょうか?
一般的にテレビの受信障害を確認する場合、下図の通りスペクトラムアナライザに測定用アンテナを接続して、信号の受信レベルの強弱などを確認します。

202102測定のツボ図3.png

アナログ時代のテレビ放送では、「信号レベル」や「スペクトラム特性」、「信号レベルとノイズ比(C/N比)」、「視聴モニタ」」などで放送波の品質管理を行っていましたが、デジタル放送の場合、それらの指標以外にも以下のような重要な測定があります。

>電界強度 : 信号受信レベルを測定します。
>信号解析 : デジタル信号特有の測定です。

  ・ MER
  ・ コンスタレーション表示
  ・ サブキャリアMER
  ・ 遅延プロファイル表示
  ・ 周波数特性表示

これらの測定には、スペクトラムアナライザの機能だけでは十分ではなく、地デジ放送専用の信号解析機能をもった測定器が必要です。上記の測定に関して、受信障害の例を参考に測定の内容を紹介します。


障害事例の測定 ①:電波の遮断や遅延

電界強度



202102測定のツボ図4.png


          

電界強度は、地デジ放送の受信電界レベルを表します。
このレベルがある程度高くないと映像に影響します。 

一般的に電界強度が60 dBμV/mを切る地域は弱電界地域、60 dBμV/m以上で受信できるエリアを中電界地域や強電界地域(80dBμV/m以上)と言われており、60 dBμV/m以上の電界強度を目安に確認します。

                     (クリック拡大)


信号解析 (遅延プロファイル)


【遅延波波形】
202102測定のツボ図5.png
            (クリック拡大)
 

遅延プロファイルは、自局の電波以外の遅延波の存在を確認することができます。

 遅延波は、ガードインターバル*(GI:126 us)を超えない範囲であれば、問題にはなりませんが、超えてしまうと妨害波になり、受信障害が発生します。

* ガードインターバル:反射などで遅れて受信される電波が受信障害の原因とならない時間の範囲



MER

202102測定のツボ図6.png
    

MERは、デジタルテレビ放送の信号品質を数値化したもので、C/Nと相関性が高く、放送視聴の受信状態を把握するのに有効な数値です。

一般的にMERの目安は、以下の通りです。

MER(受信状態):
17~20 dB:受信不安定(悪い)
20~25 dB:受信可能
25~27 dB:受信良好(良い)

MERの値が、20 dB以上であることを目安に確認します。

           (クリック拡大)


後編では、視聴(受信)障害事例の「国内の他の地域から到来する電波干渉」と「隣国等から到来する電波干渉」について、取り上げたいと思いますのでお楽しみに。



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 最後に、確認クイズです!
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問題:地上デジタル放送の受信電波の品質評価にスペクトラムアナライザを用いる際、正しい説明は1~3のどれでしょう?

  1. アナログ放送と同じ指標で測定しておけば問題は無い。
  2. 地上デジタル放送の場合は、アナログ放送と同じ指標に加えて、電界強度および信号解析での測定も重要となる。
  3. アナログ放送とは違い、地上デジタル放送では測定する必要は無い。


正解者の中から10名様にアンリツ特製「真空2重構造ステンレスタンブラー330ml」を差し上げます。

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*当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。

  ご回答の際、今後のコラムで取り上げて欲しいテーマやご感想なども添えていただけると幸いです。

クイズの回答はこちらから 終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。

締め切り2021年3月8日(月)。 みなさまの回答お待ちしております。


※本記載内容は2021年2月1日現在のものです。



◆ 今回ご紹介した測定画面はこの測定器を使用しています。

地上デジタルテレビ放送の信号品質(フィールド測定)に。

202102測定のツボ図7.png

MS271xE ISDB-T解析オプション付きスペクトラムアナライザ

アンリツでは、地上デジタルテレビ放送開始初期からハンドヘルドタイプの計測器を販売しており、地上デジタルテレビ放送の発展に貢献してきました。
現在はMS2712Eというモデルが、デジタル放送専用の信号解析機能を継承しており、フィールドでの測定用途に活躍しています。

yajirushi_2.png 【リーフレット】ISDB-T解析オプション、マイク波回線の登録点検、保守



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アンリツ株式会社 通信計測カンパニー グローバルセールスセンター 通信計測営業本部 第1営業推進部

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