基地局に敷設したケーブルの長さを知りたい! <サイトマスタユーザ必読>
「新設の基地局に同軸ケーブルを敷設しているのだけど、敷設後にケーブルの長さは測れますか?」
時々、このような質問をいただきます。
今回は敷設後でも同軸ケーブルの長さを測定可能な弊社測定器の機能をご紹介します。
弊社には、ケーブル/アンテナアナライザの代名詞ともなっているサイトマスタという測定器があります。
この製品はフィールドでの使用を前提としバッテリ駆動、可搬型の小型ベクトルネットワークアナライザ(VNA)です。
主な用途は、設置した無線アンテナシステムの反射特性(VSWRやリターンロス)を測定し、
無線機から出力された電波がアンテナ端から効率よく出力されるかを調べる時に使用されます。
このサイトマスタには、DTF(Distance to Fault、障害点までの距離)測定と呼ばれる機能もあり、
これにより鉄塔などへ登ることなく同軸ケーブルの長さを安全に測定することが可能です。
もしかすると皆さんも無線設備のVSWRを測定するために既にサイトマスタをご使用になったことがあるかもしれません。
DTFをご理解いただき更に検証の幅を広げられてはいかがでしょう。
それではこのサイトマスタを使用してケーブルの長さを測るときのポイントをお伝えします。
まずは、サイトマスタのDTF機能の測定画面を見てみましょう。
図1:サイトマスタ DTF(障害位置検出)機能 測定画面例
(画像はクリックして拡大可能)
図1では、横軸が距離=0~10m、縦軸がVSWR=1~1.2に設定しています。
赤枠で囲われたPropagation Velocityはサイトマスタ工場出荷時デフォルト値の1になっています。
グラフ左端0mのところは、測定器の基準面(校正点)です。左から6メモリ目近く(6.18m)に
VSWR 1.10のポイントが確認できます。しかし、実はこの測定は、次のような系を測定したものです。
図2:実際の測定系
(画像はクリックして拡大可能)
ここでお気づきでしょうか?
測定結果は6.18m、実際の同軸ケーブルの長さは5mで、一致していません。
このDTFを測定するにあたり、特にご注意いただきたい点が2つあります。
一つ目のポイントは、サイトマスタ内部では例えると、「時間にして10分の距離です」と測定するだけなので、
それが歩く速度か、自転車の速度かを設定しないと測定距離が変わる点です。
同軸ケーブルを伝達する電波は同軸ケーブルの材質によって光の速度より遅くなることが知られています。
これを伝搬速度(Propagation Velocity)や波長短縮率と呼び、値は0.6~0.9程度が多いようです。
(光の速度に比べ40%~10%遅い)サイトマスタは電気的な測定を行いますので、
この伝搬速度の係数をしっかり設定しないと正確な距離を求める事が出来ません。
この値は、各ケーブルメーカより開示されていると思います。
このポイントを踏まえて、図1の測定画面で実際に測定する同軸ケーブルの伝搬速度の係数(0.810)を
設定すると図3に示すような正確な距離が算出できます。
図3 伝搬速度係数を適切に設定した測定結果
(画像はクリックして拡大可能)
もう一つのポイントは、分解能と測定可能な距離がトレードオフになる点です。
分解能を細かくすると長い距離の測定が出来ず、一方で長い距離(最大1500m)まで測定出来るようにすると、
設定によっては分解能が数mと粗くなる事もあります。
これらはDTF Aidというメニューで設定していただくのですが、詳細は取扱説明書をご覧ください。
(▶ ユーザガイド10580-00252-ja の場合P41/90)
冒頭にご紹介した質問「新設の基地局に同軸ケーブルを敷設しているのだけど、敷設後にケーブルの長さは測れますか?」も
このDTF機能で調べていただく事が可能という点をご理解いただけましたでしょうか。
●さらに詳しく
詳細につきましては、以下でご紹介しているサイトマスタシリーズ 操作ガイドビデオ、6項の障害位置特定編で
実際の操作方法とあわせてご説明させていただいておりますので是非ご覧ください。
※本記載内容は2020年5月1日現在のものです。
【 ご紹介 】 |
◆ サイトマスタシリーズ 操作ガイドビデオ
サイトマスタの操作方法、測定方法を各種わかりやすく動画で確認できます。
1.特長編 2.準備編 3.VSWR測定編 4.ケーブルロス測定編 5.電気長測定編 6.障害位置特定編 7.GPS受信機能編
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◆ アンリツのケーブル・アンテナ・アナライザ(サイトマスタ)のご紹介はこちら
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