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その電波、見える?見えない?掃引型/リアルタイムスペアナの動作原理の違い




総務省による電波有効利用の観点で周波数再編が行われたり、別の無線システムと同じ周波数を共用するケースがあります。

このような場合、無線通信機間での干渉が発生することがあります。

また、国内に持ち込まれた海外製の無線設備による電波干渉やモータなどの機械設備から発せされるノイズによる

無線通信への影響など、多くの通信が利用されている現代では、様々な原因による通信障害が起こりやすい環境になっています。

そのような電波を可視化するのに役立つスペクトラムアナライザ(以下、スペアナ)ですが、

実は「方式」によって電波が見えたり見えなかったり・・・


今回は、スペアナの「方式」(従来の掃引型、FFT方式、リアルタイムスペアナ)毎の動作原理と電波の見え方について

解説します。

                                                  FFT方式…高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform)



① 掃引型スペアナは、タイミングによって捉えられない電波がある


図1は、掃引型スペアナの掃引の様子を表したものです。


201910測定のツボ_図1.png

       図1 掃引型スペアナの測定結果

(画像はクリックして拡大可能)



上段は、横軸が周波数、縦軸が時間、斜めの線が、スペアナのRBWフィルタが時間の経過とともに

周波数の低い方から高い方へ掃引している様子を示しています。

ここで、A~Dの4つの信号が有りますが、掃引型スペアナでは、RBWフィルタが捉えた信号が画面に表示されるので、

RBWフィルタが捉えなかった信号CとDは、図1下段に示すスペアナ画面には表示されません。

無線LANやBluetoothのように信号が連続的に出力されない信号は、掃引型スペアナではタイミングによって

捉えられない場合が有ります。


近年のスペアナでは、FFT方式と呼ばれるスペアナもあります。この方式は、一定幅の周波数範囲の

信号情報をまとめて取り込み計算によって周波数と信号強度を求め画面上に表示します。



201910測定のツボ_図2.png

       図2 FFT方式スペアナの測定結果

(画像はクリックして拡大可能)



図2は、FFT方式スペアナの動作模式図です。ある周波数範囲の情報を一気に取り込み演算で

そのスペクトラム情報を求めますが、その演算を行っている時間は、測定を行わないので、

掃引型スペアナに比べれば高速ですが、やはり瞬時に現れる信号を取り逃してしまう可能性が有ります。

どの程度の周波数範囲の情報が取り込めるかは、スペアナの性能により異なります。



 ② リアルタイムスペアナなら取り逃しが有りません。


201910測定のツボ_図3.png

       図3 リアルタイムスペアナの測定結果

(画像はクリックして拡大可能)



リアルタイムスペアナ(RTSA)もFFT方式ですが、信号情報取り込みと演算処理を切り離して行うことができるため

切れ目のない信号情報取り込みが可能になります。このために一瞬しか現れない信号も捉える事が出来ます。

とはいえリアルタイムスペアナでも100%確実に信号を捉える訳ではなくPOI(Probability Of Intercept)

と呼ばれる指標で信号捕捉の性能を表します。仕様書でこのPOIの値が小さい(短い時間)ほど、

信号捕捉率が高い高性能リアルタイムスペアナという事が確認出来ます。


201910測定のツボ_表1.png

               表1 弊社製リアルタイムスペアナMS2090Aデータシート記載例

(画像はクリックして拡大可能)



ところで、リアルタイムスペアナというと図4のようなカラフルな画面が特徴です。


201910測定のツボ_図4.png

          図4 リアルタイムスペアナ測定画面

(画像はクリックして拡大可能)



これは、Density Display(密度表示)と呼ばれ、時間的な信号密度を色で表現している物です。

図5に示すように複数回の信号情報取り込みによって出現率の高い画面表示ドットを数値化し、

それに応じた色を付ける事で、信号捕捉頻度を表現しています。


201910測定のツボ_図5.png

                 図5 密度表示をするためのプロセス

(画像はクリックして拡大可能)




② リアルタイムスペアナの用途は?


201910測定のツボ_図6.png

                       図6 測定画面比較

(画像はクリックして拡大可能)



図6は、100MHzの広帯域信号を掃引型/FFT方式のスペアナとリアルタイムスペアナで見比べたものです。

掃引型/FFT方式のスペアナは、信号の外側しか表示していないのに対して、リアルタイムスペアナは、

その信号の内側にも重なり合う他の信号が有ることが分かります。


また、図7では、Bluetooth信号が時間と共に使用周波数を変え(ホッピング)ていることが分かります。

このようにリアルタイムスペアナは、一瞬しか現れない信号や重要な無線通信の干渉波となる信号を

明確に捉え表示する事が出来るので、無線通信の品質管理や維持に大きな助けとなります。

リアルタイムスペアナは、非常に大きなデータ量を取り扱いますので設定できる周波数の幅(スパン)には、

機器の性能に応じた制限が有り、周波数のスパンを広く設定出来るほど高性能と考える事が出来ます。


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図7 Bluetooth信号のホッピングを捉えたリアルタイムスペアナの測定画面

(画像はクリックして拡大可能)



いかがでしたでしょうか、方式の動作原理の違いによって見え方が異なることがおわかりいただけましたでしょうか。

スペアナを使うことで、どの周波数にどれくらいの強さの電波が、どれくらいの周波数幅を使用しているかを見ることが出来ます。

しかし、昨今の高度な無線通信は非常に速い周期で信号のOn/Offを行うものや

Bluetoothのように周波数を絶えず変化するものなど様々です。


もしかするとみなさんが普段お使いのスペアナでは目的の信号が見えていないかもしれません。

方式毎の動作原理や見え方をしっかりおさえたうえで、目的にあったスペアナで測定しましょう。


                                                                                                                       


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 最後に、確認クイズです!

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問題:以下文章中の①と②の〇に入る言葉はそれぞれ何でしょう?


掃引型スペアナで捉えられない瞬間的な電波もカラフルな画面が特徴の 〇〇〇〇〇〇スペアナなら逃しません。

仕様書で 〇〇〇 (Probability Of Intercept)の値が小さいほど信号捕捉率が高い

高性能リアルタイムスペアナということが確認できます。


正解者の中から5名様にアンリツ特製「真空2重構造ステンレスタンブラー330ml」を差し上げます。


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*当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。

  回答時に会社名、部署名、氏名、郵便番号、住所、電話番号のご記入をお忘れなく。

  回答とともに今後のコラムで取り上げて欲しいテーマのリクエストやご感想なども添えていただけると幸いです。


クイズの回答を送る  終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。


締め切り2019年11月15日(金)。みなさまの回答お待ちしております。



※本記載内容は2019年10月1日現在のものです。 





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アンリツ株式会社 通信計測カンパニー グローバルセールスセンター 通信計測営業本部 第1営業推進部

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