テレビのアンテナの向きって決まってるの? -アンテナ利得とは-
街中で屋根を見渡すと大抵のアンテナはある一定の同じ方を向いていることに気付きませんか?
地上波テレビ用の魚の骨のような形をしたUHFアンテナを取り付ける際には、アンテナの向きを変えながら
電波が強く受信できる方向を探します。
アンテナの向きを電波が強く受信できる方向に調整すると映像が映り、他の方向では映らなくなります。
このようにUHFアンテナにはテレビ塔からの電波を受けやすい方向があり、
他の方向からの電波を受けにくい特性を持っています。それを指向性と呼びます。
指向性の大きさを表す名称として、アンテナ利得というものが使われています。
アンテナ利得は被試験アンテナと基準アンテナで同じ電波を受信したときの受信電力を比較して、
その差をdB(相対値)という単位で表します。
(画像はクリックして拡大可能)
アンテナ利得の表し方には、アイソトロピック(等方性)アンテナを基準にする方法と、
半波長ダイポールアンテナを基準にする方法の2種類があります。
アイソトロピックアンテナとは理論上の点アンテナで、電波を全ての方向に同一強度で放射し、指向性が球状の仮想のアンテナです。
水平偏波、垂直偏波面のデータのようにどこから見ても“丸”になります。(図1参照)
(画像はクリックして拡大可能)
半波長ダイポールアンテナは両手を真横に広げたような左右対称なアンテナです。
図2はアンテナの写真およびエレメントをイラスト化したものです。
(画像はクリックして拡大可能)
図3のようにアンテナを立てて置くと、垂直偏波面はりんごを割ったような8字特性の指向性となり、
水平偏波面はアイソトロピックアンテナと同様な円形の指向性となります。
(画像はクリックして拡大可能)
アイソトロピックアンテナを基準にした利得を絶対利得と呼び、アイソトロピックの頭文字のiを単位に付け[dBi]と表示します。
しかし、アイソトロピックアンテナは仮想のアンテナですからUHFアンテナの利得の実際の測定には使用することはできません。
そこで実際の測定では、半波長ダイポールアンテナを基準アンテナとして使います。
半波長ダイポールアンテナで測定した受信電力値とUHFアンテナで測定した受信電力値の差がアンテナ利得になります。
そのアンテナ利得は、半波長ダイポールアンテナを基準にしていますので相対利得と呼び、
ダイポールアンテナの頭文字のdを単位に付け[dBd]と表示します。
基準となる半波長ダイポールアンテナの絶対利得は2.14[dBi]と分かっていますので、
絶対利得Ga[dBi]と相対利得Gr[dBd]の関係は以下となります。
相対利得Gr[dBd] = 絶対利得Ga[dBi] - 2.14[dB]
つまり、dBdとdBiの間には 0[dBd] = 2.14[dBi] の関係があります。
アンテナの仕様で2.14dBiと記載されていれば、理想的な半波長ダイポールアンテナと同等であることを意味します。
また、表1のようにカタログ上ではdBdのdを省略してdBと書いてあることがほとんどです。
◆まとめ
・アンテナには指向性があり、それを表すにはアンテナ利得が使われている。
・アンテナ利得には2種類の表し方がある。
[dBi]:アイソトロピックアンテナ、[dBd]:半波長ダイポールアンテナ
・dBdとdBiの間には 0[dBd] = 2.14[dBi] の関係がある。
・dBdはあまり使われず、単位としてはdBと表示していることが多い。
※本記載内容は2019年9月1日現在のものです。
【 ご紹介 】 |
◆ 「スペクトラムアナライザで電界強度測定」リーフレットご案内
「電界強度測定器とスペクトラムアナライザ」 | |
「ハンドヘルドスペクトラムアナライザを使用した電界強度測定」(測定例) | |
「スペクトラムアナライザを使用した 中波帯の電界強度測定のご紹介」 |