スペアナのReference Levelの設定について ≪ 無変調波と変調波 ≫
Reference Level(基準レベル)はスペクトラムアナライザ(以下、スペアナ)の波形表示領域の上端の値であり、
正確なレベル測定ができる最大のレベルです。
無変調波(正弦波)と変調波(特に帯域が数MHzの変調波)では、
その設定方法に違いがありますので、注意が必要です。
図1の波形は出力レベル0dBmの無変調波ですが、この信号の場合、
波形のピークがReference Levelになるべく近くなるようにReference Levelを調節することで、
より正確なレベル測定が可能です。
図1 無変調波での正しい設定例
(画像はクリックして拡大可能)
図2の波形は、図1無変調波と同じ出力レベル0dBmで約6MHzの帯域幅を持つ変調信号ですが、
表示される波形はReference Levelより27dB ほど低下して表示されます。(RBW10kHzの場合)
<※注1:2020/2/7表記修正>
図2 同じReference Levelのまま変調をかけた場合
(画像はクリックして拡大可能)
図3の波形は図1無変調波(水色)と、図2変調波(黄色)の波形を重ねて表示したものです。
図3 変調の有無による同じ電力の波形比較例
(画像はクリックして拡大可能)
変調波の場合、Reference Levelの設定は、波形のピークではなく、
信号の電力のレベルに設定することが必要です。
変調波信号のレベルを確認する場合、スペアナによってはChannel Powerと呼ばれる測定機能を使うことができます。
図4から、今回の例の信号電力レベルは、-0.08dBmということが分かります。
図4 Channel Power機能測定画面
(画像はクリックして拡大可能)
◆ ココがよくある勘違いポイント!
変調波の場合、波形のピークをReference Levelに近づけると正確な測定にならない場合があります。
図5は極端な設定の(Reference Levelを-15dBmに下げた)場合ですが、
Level Over等の警告表示や、信号の近くに、異常な波形がみられます。
図5 変調波での誤った設定例
(画像はクリックして拡大可能)
帯域幅を持つ変調波の場合、全送信電力は波形のピーク点のレベルと同じではないため、
スペアナ内部の回路で歪みが発生しこのような状態になります。
隣接チャネル漏洩電力の測定等では正常な測定結果になりません。
無変調波と変調波のReference Levelの設定を同じように考えてはいけません。
◆ さらなる注意点とは!?
また、スプリアス測定時などのReference Levelの設定には、もう一つの注意点があります。
画面上に小さいレベルのスプリアス波形(図6 信号A)しか見えない場合に
Reference Levelをその波形のレベルに合わせて設定してしまうと、送信信号等、観測している周波数範囲以外に
大きな信号(図6 信号B)が入力されていますので、大きな信号によりスペアナ内部の回路で歪みが発生し、
本来送信機が発生していないスプリアスや妨害波が観測される等の問題が発生します。
図6 測定画面の周波数範囲以外に大きな信号が入力されている場合
(画像はクリックして拡大可能)
この場合のReference Levelは、測定画面上の範囲だけでなく、
入力コネクタに入る全部の信号の総電力に設定するのがスペアナの基本的な使用方法です。
★ まとめ
・無変調波の場合、波形のピーク値をReference Levelに設定する。
・変調波の場合、信号の電力をReference Levelに設定する。
・スプリアス測定時等は入力コネクタに入る信号の全入力電力に設定する。
※本記載内容は2019年5月1日現在のものです。
<※注1:2020/2/7表記修正>
表示される波形はReference Levelが27dB 低下して表示されます。(RBW10kHzの場合)
表示される波形はReference Levelより27dB ほど低下して表示されます。(RBW10kHzの場合)
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