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"特性インピーダンス" の考え方とは? 高周波の世界ではなぜ重要?


直流や数十kHzの低周波信号を扱っていた人がMHzやGHzの高周波の世界に来たとき、

最初に戸惑うのが「特性インピーダンス」の概念ではないでしょうか。

高周波の世界では、信号を通すケーブルはこの「特性インピーダンス」を持っています。50Ωや75Ωなどの値が一般的です。

「特性インピーダンス」という名前や、単位にΩを使用しているところから、インピーダンスの仲間の抵抗値の一種かと思いますが、

テスターでどこをどう測定してもこの50Ωまたは75Ωという数字は出てきません。


201810測定のツボ図1.png


特性インピーダンスは少し掴みどころのない概念です。

・テスターで50Ωを測ることができない。

50Ωなのに信号を通してもケーブルでは電力を消費しない


通常のインピーダンスは電圧と電流を関係づける値です。簡単な例が抵抗値です。

たとえば、抵抗に電流(I)を流した場合、この抵抗の両端に発生する電圧(E)は、


201810測定のツボ図2.png

という有名な関係になります。

この式のRが抵抗値で、抵抗に流れる電流と抵抗にかかる電圧の関係を決める値で、抵抗に固有の値になります。


これと同じように特性インピーダンスも電流と電圧の関係を表しています。それゆえ「インピーダンス」と名前がついています。

しかし、特性インピーダンスでの電圧と電流は抵抗の時とは違います。

電圧はケーブルの中心導体と外部導体の間、電流は中心導体を流れる電流になります。

この電圧(E)と電流(I)の関係を示すのが特性インピーダンス(Zo)になります。

特性インピーダンスの場合は、電圧と電流の向きが90°違います。それゆえ、特性インピーダンスでは電力の消費はおこりません。

(抵抗にかかる電圧と流れる電流は向きが同じなので電力として消費します。)


201810測定のツボ図3.png


低周波数の場合、この特性インピーダンスを気にすることはほとんどありませんが、

高周波数(信号の波長に対してケーブルの長さが無視できなくなる周波数)や、

急激に信号が変化するとき(パルス信号の立上り/立下り)などではたいへん重要になります。


たとえば、下図の通り、特性インピーダンス50Ωのケーブルの一端に100Ωの抵抗をつなぎ、

反対側に理想的な1Vの電圧源つないだとしましょう。


201810測定のツボ図4.png


電圧源が直流あるいは数kHzの低周波数の場合、定常状態(電圧源をケーブルに接続して少し時間がたって

安定した状態)では抵抗にかかる電圧は1V、流れる電流はオームの法則から1V/100Ω=0.01Aと求まります

ここではケーブルの特性インピーダンス50Ωは関係ありません。



次に、電圧源をケーブルに接続した瞬間を考えてみましょう。


201810測定のツボ図5.png


ケーブルを通る信号が進む速さは有限(約30万km/s *注1)です。電圧源をケーブルに接続して、

電圧源からの電圧と電流が1mのケーブルを伝わって抵抗に届くまで約3.3nsの時間がかかります。

この3.3nsの時間の間、電圧源にとってケーブル端に100Ωの抵抗が接続されていることは不明です。


では、この3.3nsの間でケーブルを流れる電圧と電流の関係はどうなっているでしょうか?

この電圧と電流の関係を決めているのが特性インピーダンスになります。


電圧源をケーブルに接続した瞬間、特性インピーダンスで決まる電圧と電流が電圧源から抵抗に向かって流れ始めます。

抵抗に到達したとき、抵抗のインピーダンス(抵抗値)が特性インピーダンスと同じならば

(50Ωのケーブルなら50Ωの抵抗値が接続されているとき)、信号は抵抗で消費され電圧と電流の流れは終わります。




201810測定のツボ図6.png


上図のように抵抗のインピーダンスが特性インピーダンスと異なっていると、一部の信号が反射して

電源側へ戻っていきます。電圧と電流はインピーダンスによって関係づけられています。

50Ωの特性インピーダンスで関係づけられた電圧と電流はそのままでは100Ωの抵抗に流れることができません。

100Ωの抵抗で消費できる分だけの電圧と電流が100Ωの抵抗に流れ、残りは電圧源に戻っていきます。


戻ってきた信号は電源でまた反射して再び抵抗に向かって流れます。

この繰り返しで最終的に回路に流れる電圧と電流は定常状態の値に落ち着きます。

信号の周波数が低い場合、この動きは一瞬で終わり、最初から接続されている抵抗で決まる電流と電圧になり、

あたかもケーブルの特性インピーダンスは関係ないように見えます。


しかし、信号の周波数が高くなり信号の波長に対してケーブルの長さが無視できなくなると、信号が反射を繰り返し

定常状態に落ち着く間に電圧源の電圧も変化するためケーブルの場所により電圧や電流が異なる現象が生じ、

信号の伝送がうまくいかなくなります。

(このあたりの電圧と電流の変化の説明は非常に複雑になるためここでは省略します。)



●今回のポイント

・ 低い周波数(ケーブルの長さに対して波長が十分長い)では、特性インピーダンスを気にする必要はない

・ 高い周波数(ケーブルの長さに対して波長が無視できない)の場合、

   ケーブルに接続する素子やデバイスのインピーダンスはケーブルの特性インピーダンスに合わせる必要がある



(注*1):実際にケーブル中を進む信号の速さはケーブルに充填されているテフロンの影響によりこの値より小さくなりますが、ここでは無視しています。



 ※本記載内容は2018年10月1日現在のものです。





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