" W " ではなく " dBm " を使う理由とは? (単位についてのお話 その1)
日常の生活では「60W電球」と表現するように、電力の単位に「W」を使用しています。
それに対して、高周波測定の世界では電力の単位として「dBm」と呼ばれる単位を使用しています。
「dBm」は電力を対数(log:logarithm)で表現した単位です。
「dBm」を分解すると3つの成分からできています。
d:deci、1/10を表す接頭辞
B :Bel、電力の比率を常用対数で表した単位、電話の発明者Graham Bellを記念した単位
m:1mWが基準であることを表す
たとえば、1W(1000mW)をdBm単位に換算するには次のように計算します。
1mWが基準なので、1Wが1mWの何倍になるかを計算して対数に変換します。
その結果を10倍にしています。
10倍にする理由は、最終結果で有効桁2桁が整数になるようにして扱いやすい数字にしているためです。
変換式で10倍にしている代わりに、単位(d)で1/10することで相殺させています。
結構複雑ですね。
なぜこのような単位を使うかと言うと、ひとつには数字を扱いやすくするためです。
測定の現場では、無線機出力のような数Wの大きな電力から、熱雑音に近い非常に小さな電力まで扱うことが多いです。
この広い範囲の電力を「W」で表現すると桁が多くなり扱いにくくなります。
それに対して「dBm」の場合、2、3桁の数字で表すことができます。
「W」表現の桁を減らすだけなら接頭辞を付ければ良いですが、これをスペクトラムアナライザの測定画面で表示させれば、
その違いは一目瞭然です。
たとえば30dBm(1W)の信号を入力して-30dBm(1uW)の高調波を測定するとき、「dBm」単位では両方の信号を
ひとつの画面に表示できますが、「W」表示だとスプリアスの信号は小さくなりすぎて表示できていません。(図1参照)
1000倍 |
1W |
30dBm |
基準 |
0.001W (1mW) |
0dBm |
1/1000 |
0.000 001W (1uW) |
-30dBm |
1/1000000 |
0.000 000 001W (1nW) |
-60dBm |
図1
(画像はクリックして拡大可能)
もうひとつの理由は、計算が簡単になるということです。
回路設計などでは、アンプや減衰器等をいくつか接続して設計します。
入力した信号が出力でどのくらいの大きさになるかを計算するとき「W」単位では掛け算になりますが、
「dBm」単位だと足し算で計算できます。
今なら電卓もあり掛け算も簡単にできますが、その昔は足し算だけで済むメリットがありました。
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「電力:電圧_換算表」
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※本記載内容は2017年12月1日現在のものです。