デリケートな同軸コネクタ、正しくケアできていますか?
ネットワークアナライザを使用して測定を行う際に、ついつい見逃されているのがコネクタのケア(取扱い)だということをご存知でしょうか?
ネットワークアナライザは高価な校正キットを使用して測定の基準面を定めて、基準となる信号が被測定物に入射された際の通過(伝送)
と反射の周波数特性を測定します。つまり、校正の精度が重要となります。
1. コネクタの摩耗や汚れ
上図をご覧ください。
長年使用されたコネクタは外部導体や中心導体が金属の摩耗や腐食などにより汚れが付着したり、接合部分の摩耗により、
期待したコンタクト性を発揮できなくなる可能性があります。
ご存知のように同軸コネクタの場合、中心導体(信号ライン)と外部導体(グランド)の間に電界を発生させて信号を伝送していきます。
この金属部分が汚れや摩耗等により従来の接続性が担保できないようになると、特に高周波において校正を行っても残留の
インピーダンスミスマッチが大きくなり校正の精度や測定の再現性に大きな影響を与えます。
“以前はきちんと測定できていたのに、同じ校正キットを使用しても期待した精度が出ない”
という経験はございませんか?
一度コネクタの中心導体と外部導体の状態を確認していただく必要があります。
もし汚れが目立つようであれば、綿棒(コネクタのサイズによっては別の素材が良い場合もあります。)にアルコール等を浸して
汚れをクリーニングしてみることをお勧めします。
上図①はMale(オス)コネクタのクリーニングの例です。
アルコールに浸した綿棒を使用して外部導体の接合面とMaleピンの側面を軽く触りクリーニングします。
上図②はFemale(メス)コネクタのクリーニングの例です。
①と同様に綿棒を使用して外部導体の接合面と中心導体の接合面をクリーニングします。
注意:汚れが落ちにくい場合は無理をせずにメーカに処理方法をお問合せ下さい。また中心導体の破損にご注意下さい。
2. コネクタの破損の確認
ある時突然性能が出なくなったり、測定の安定度が悪くなったり、またはある周波数で異常なモードが発生したり
というご経験は無いでしょうか?その際に疑われるのがコネクタの破損等があります。
3. トルクレンチの使用の義務付け
コネクタを締め付ける際や取り外す際にはコネクタの規定トルクで動作するトルクレンチをお使いですか?
熟練のBさんが測定を行うと期待した値となるが、若手のA君が同じ機器を使用して同じように測定しても
期待通りの結果にならないという経験はありませんか?
コネクタの接続時等のトルクレンチ使用は義務付けていますか?
トルクレンチの正しい使用方法を徹底していますか?
以下の表はアンリツが使用している標準コネクタと推奨トルクレンチとトルクの値です。
コネクタタイプ |
トルクレンチ 型番 |
トルク スペック |
オープン・エンドレンチ |
7 mm |
01-200 |
12 in-lbs |
None Available |
N |
01-200 |
12 in-lbs |
None Available |
3.5mm/SMA |
01-201 |
8 in-lbs |
01-204 |
K |
01-201 |
8 in-lbs |
01-204 |
V |
01-201 |
8 in-lbs |
01-204 |
W1 |
01-504 |
4 in-lbs |
01-505 |
トルクレンチを使用せずに手で締めたり六角レンチ等を使用して、自分の勘で締め付けたりした場合、
上記の規定トルクより弱く不安定になったり、又は、規格をオーバーしてしまいコネクタの破損を招き校正の精度を阻害したりします。
トルクレンチも使用方法を理解していないとオーバートルクになってしまう可能性があります。
上図のようにトルクレンチのレバーの先端(赤丸)部分を持ち矢印方向に力を加えますが、
上図のトルクレンチのように完全に折れるまで回すと余計なトルクがかかる可能性があります。
ゆっくりと力を加えてレバーが回転方向に動き出すところが正常なトルクとなります。
※本記載内容は2017年6月1日現在のものです。